おくぬ〜の『来た球を打つ!』

スイスと日本で活動する舞台俳優奥野晃士(あきひと)のブログ。

追悼 『わが町』音楽監督 松本泰幸さんを偲んで

Grüezi!

2010年秋に初演された今井朋彦 さん演出、
ワイルダーの『わが町』の音楽監督だった
松本泰幸さんの訃報が届いた。

以来、一人スイスの地にて、
舞台で関わらせていただいた故人との思い出を反芻している。

2010年この『わが町』という作品は私の人生の中でも、
転機といえる時期に取り組んだ作品であるし、

音楽監督だった松本さんは挿入歌の作曲だけでなく、
劇中の生演奏という形でも舞台上に登場していたので、
共演者でもあった。
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◾︎写真/2013年秋、『わが町』再演された時。

『わが町』といえば、アメリカ戯曲を代表する作品で、

「地球上で『わが町』が上演されていない夜はない」

と言われるくらい
世界中で愛されている作品であり、
私が初めてギブス医師という、父親役を仰せつかった作品。

「俺も父親を演じる年になったか………」

と、しみじみ思った。

しかも私生活でも父親になる時期でもあり、
作品を通してワイルダーから
父親になるべき心構えを伝授されているようにも思えた作品だった。

例えば、一幕にこんなシーンがある。

ギブスが夫人から、高校生になった息子のジョージが母親の薪割りの手伝いを少しもやってくれないという愚痴を聞き、
手伝いを促すシーン、
食卓で息子と二人で向き合い、まず

ギブスが「表で変な音を聞いたんだけど、何だかわかるかい?」

と問いかける。
そしてその音が、母親が薪を割る音であることを告げる。
そしてギブスは以下のようにこんこんと語る。

ギブス「お前も知ってるとおり、母さんは・・・朝は早く起きる。一日中御飯を拵らえて、洗濯にアイロン掛けだ・・・その上に裏へ行って薪を割らなくちゃならん。母さん、きっとお前に頼むのが面倒になったんだな。諦めて自分でした方が早いと思ったんだろう。だがお前は、母さんの拵らえた御飯を喰べる。母さんが綺麗にしておいてくれた服を着る。そうして表へ出て行ってベースボールをやっている・・・母さんはまるで家政婦みたいだがそう云うことは私達、したくないな。いや、お前が気がつきさえすればそれでいいんだ。さあ、ハンカチ。」

自責の念にかられ、目に涙を浮かべるジョージに、ギブス医師はこう続ける。

 「ジョージ、父さんは、お前の小遣いを週二十五セントに増やしてやることにしたよ。もちろん薪を割って上げるためじゃない、そりゃお前の親孝行だからな。しかし、お前もだんだん大きくなるし・・・小遣いの使い道も増えて来るだろうからね。」

言うことをただ言うだけでなく、愛情あるフォローを入れる………。
私もギブスのように優しく息子を導く父親であれたらいいなと思ったものだ。

翌年生まれた子供が、もしも男の子だったら、
ジョージと名付けていたかもしれない………。

劇中には賛美歌を歌うシーンがいくつかあって、
松本さんは歌の指導も買って出てくださっていて
そこでは音楽を通じて、心を通じ合わせることの重要性を学んだのだが、
毎回魂のこもったご指導だった。

そして、松本さんこそ、このギブスのように優しく大らかに、
いつも我々を高みへと導いてくれた人であったと思う。

そして氏の奏でるサックスの音色は深く澄み渡り、
メロディーは切なさの中にやさしさと希望が満ちたものだった。

動読公演でのコラボが実現しなかったのが悔やまれる。

賛美歌「つかれたるものよ、みこえきけ」と「かみによりて」をくちづさみつつ………


どうか安らかにお眠りください。

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Tschüss!


奥野晃士






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ゴミの片付けはゴミ業者の仕事か?

Grüezi!

昨年の今頃は毎日ドイツ語教室に通っていたのであるが、
とても一年たったとは思えない。
同じように日本でも9月に新潟でまたお世話になったが、
『カルメン』から1年3ヶ月が経っているなんて信じられない思いだ。

スイスと日本を行ったり来たりしだしてから
時の経つスピードの速さに驚く。

昨年も今年も日本とスイスをちょうど半分づつくらいの生活だが、
1年が半分に短縮されたような感覚だ。

そんな思いで目覚めた今朝、一階にある我が家のリビングから中庭を見たら、
窓から5メートルほどの芝生の上に白いビニールに入ったゴミが落ちていた。

おそらく、犬か猫によって引きずられてきたのであろう、
一部袋が裂けていて、中身が少し外にでていた。

我々の家の敷地内ではないにしろ、ご近所の目もある。

でもチューリッヒ市では指定された袋にゴミを入れて捨てる決まりになっており
そのゴミ袋も一枚100円くらいとバカにならない。

しかもゴミ袋に近寄り観察すると、飲みつくした錠剤入れなどが散見され、
なんと小動物の排泄物が袋の上部にどういうわけか付いている。

一階の、しかもうちの極近所の住人が、とりあえずビニール袋に入れたゴミを
外に出しておいたのを、小動物が運んできたのであろう。

スイスではゴミ掃除は専門の業者に任せてあるからと言わんばかりに
よく捨てられたカンやゴミを目にする。
タバコの吸殻などは当然のように道にポイ捨て、
その点あまり神経質なほうではない私でもきになるくらいだ。

窓から庭を覗けばゴミが見えるのはいかにも気持ちが悪いので、
今家にあるゴミとまとめて指定の袋に詰め、捨てることにした。

ついでに目に付いたゴミも一緒に捨てる。

確かに、本来入るはずだった我が家のゴミの代わりに
誰のものとも知れないゴミが入るのはちょっとした損失であるが、
やはりいつまでもゴミが視界に入って精神的苦痛を被るより経済的だ。

あと、人知れず掃除をするということは、仏教でいう陰徳をつむと言うことだと、
十代からお世話になった合気道の先輩は常々言って、
稽古帰りに道に落ちている空き缶などを両手いっぱいに拾いながら
西中島の寮に帰ったのも思い出した。

とりもなおさず、そういうちょっとしたことも、日本の文化ということか………。

舞語りコンサート『蜘蛛の糸』 第一部はだいたい構成終わりました。

『Lesung mit Performance und Musik』についてはこちら

Tschüss!


奥野晃士

ドイツ語のセリフ

Grüezi!

スイスはぐんと冷え込み、今朝は霧が出て、吐く息も白く、冬の訪れを感じてしまいました。

今日は予定がなかったので、娘のリクエストで朝の10時からプールに家族と行きましたが、
温水プールにジャグジーもついてて、筒の中をくねくねしながら滑り降りる滑り台もあり、
6回で40フランのチケットなので、
1回一人700円ほどでチューリッヒ市民は年中水泳を楽しめるわけです。

場所も外国人登録所があるので、スイスに来た時いの一番に訪れたリンデンプラッツから歩いて5分ほどの場所。

さすがに土曜日なので12時頃には結構混んできたので退散しましたが、
それでもたっぷり2時間遊べていい運動にもなりました。

そのあとは帰宅して、いよいよ本番まで一週間を切った、
舞語りコンサート『蜘蛛の糸』の準備。

日本ではトラディショナルサウンドの堀池龍二さんプロデュースで、
若林豪さんと開催した
『ふじのくにお寺ムーブメント』大岡淳さんの演出で初演したのですが、
それ以降お寺を始め何度も”動読”で上演させてもらっているのですが、

今回、お客様は半分以上がスイス人であることが予想されているので、
物語をなるべく日本舞踊でお伝えしつつ、健陀多のセリフは無謀にもドイツ語に挑戦します。

今回は相棒となるフルーティストで尺八奏者でもあるイザベルさんは、
様々なプロジェクトで忙しく、明日からフランスということもあり、
とても会って打ち合わせが出来る状態にないようで、
とりあえず台本を送ってSkypeで先日ミーティングを行いました。

イザベルさんはベルンの市立交響楽団に所属するプロのフルーティストで、
義母の日本語教室のクラスメイト。
今年の2月に義母の誕生日パーティーで10分くらいの舞台を一緒につとめ、

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さらに日本語の短期留学にきていた7月に豊橋で歴史演談で共演しており、

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1時間のミーティングでしたが、かなり話が早かった。

事前にこちらから送った台本には曲のInとOutの箇所をあらかじめ記入してあり、
物語の内容や場面の状況、それに伴ってこちらがお願いしたいイメージを打ち合わせたのですが、

早速今日、メールで候補の曲目を送ってくださったのですが、
日本の童謡を中心にした選曲で、
もしうまくいけば、とてもいい舞台になるとワクワクです。

しかし、選曲が渋い。
バッハの曲から、
日本の「この道」「ちんちん千鳥」「城ヶ島の雨」など、
日本人の私からするとさいしょは微妙だなと思ったのですが、
youtubeで改めて聞きなおしてみると、まるほど!と目から鱗で、
なかなか粋なチョイス、
改めて日本文化の良さをスイス人から教わったという感じでした。

ともあれ、電子辞書助かってます。
夜なべです。

これから本番まで追い込み、がんばります!

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舞語りコンサート
『蜘蛛の糸』


9月25日(金)18時半〜

参加費 ドリンク付
30CHF(シート)
20CHF(立ち見)

Lesung mit Performance und Musik

Galerie Claudia Geiser
Breitingerstrasse 27
CH-8002 Zürich
T +41 44 201 44 11
info@claudiageiser.ch


Tschüss!




奥野晃士


Noism 0 『愛と精霊の家』という衝撃!

Grüezi!

今年はとりわけ暑かった夏を無事の乗り切り、今は落ち葉の舞うスイスのチューリッヒに戻ってきました!

今年の夏の前半は夜叉ケ池と歴史演談、
後半は新潟に26泊させていただき、
Noism金森穣さん佐和子さんはじめ、
師匠級のダンサーさんと共演させていただいたNoism 0 『愛と精霊の家』
本当にエキサイティングな体験で、まだ余韻が続いているような感じがする。(^∇^)ノ

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※終演後出演者集合

金森穣さんを知ったのは、
NHKの『トップランナー』という番組に出演されていたの見たのが初めてだったが、
あれは確か2003年の頃だったか………。

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※オフィスに飾られた佐和さんの等身大写真。撮影は篠山紀信さん。

穣さんが、数人のダンサーさんに指示を出し、テレビで振り付けのカラクリを解説してくれているのを見て、
「これは芝居作りにも応用できるな」と、画面に思わず見入ったものだった。

その後、新潟市のレジデンスダンスカンパニーNoismの芸術監督に就任した穣さんの作品は、
SPACでも度々上演されており、
公演のたびに席は埋まるし、
鈴木忠志前SPAC芸術総監督も高く評価していてNoismといえば“鳴り物入り”の静岡入りだったわけで、
ダンサーさんとはあまり関わり合いがなかったこともあいまって
私も正直、気後れするところもあったのですが、
レセプションなどでは穣さんと気さくに話もさせていただき、
そんな様子をみたSPAC女優陣からは

「何で金森さんと普通に話ができるわけ?」

などと聞かれるくらい、金森穣といえばオーラのある、一目置かれる存在だった。

about 鈴木忠志 SCOT

また、アフタートークやシンポジウムで理論化された談話を穣さんの口から聞くたび、
常々深く感じ入っていましたが、
その穣さんの身体理論を余すところなく体現し、
昇華させることのできる類稀なるダンサーさんである井関佐和子さんもまた、

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人気実力兼ね 備えた一流の舞踊家でありながら、
Noism副芸術監督というお立場であり、
そんな二人が率いるレジデンシャルダンスカンパニーNoismを擁する新潟市は、
日本屈指の舞台芸術拠点であるという認識は、
我々舞台芸術にかかわる者の間ではゆるぎないものになっている。

About Noism

そんな新潟市で開催された『水と土の芸術祭』及び、『新潟インターナショナルダンスフェスティバル』に
今回、Noism0(ノイズム・ゼロ)という形で私も参加させていただいたのは、
昨年Noism10周年記念の劇的舞踊『カルメン』にもまして嬉しいことだった。

というのは、去年の今頃に読んだ金森さんのインタビュー記事の中で

「ゆくゆくは、舞踊や演劇、音楽などの経験を積んだプロ中のプロが集うNoism0を立ち上げたい………」

という構想を読んで、

「これはぜひ参加したいな………」

と強く思ったこともあったが、
それにしてもこんなに早くNoism0が立ち上がって、
本当にお声をかけていただき、
こんなに早く新潟に帰ってこれるなんて、夢にも思っていなかった。

今回の『愛と精霊の家』という作品は、
穣さん佐和さんのプライベートユニットunit-Cyanが2012年に発表した『シアンの家』が原案になっていたのだが、
今回は、パーソナルな作品から、より普遍的な作品に………ということで、
より深く、壮大に、観客一人一人の人生に迫る見事な作品に仕上げられたと思う。

奥野は不条理劇の巨匠イオネスコの『椅子』のセリフを与えられたのであるが、

これほど人生について、そして愛と死について迫ってくる戯曲であるとは思っていなかったし、
さらに舞踊作品としてコラージュされ、ダンスとあいまったとき、
この台詞が観る者の想像力をかきたて、
作品の持つ普遍性が、逆に観る者一人一人のパーソナルな作品として展開していく秀逸さが衝撃だった……。

出演者はお二人の欧州時代からの旧友で、Optoを主宰し、
大好評ミュージカル『エリザベート』でも振り付けを担当した小尻健太 さん、
そして、Noism2の専属振付家でありリハーサル監督であり、
周囲からも切望されていた、しばらくぶりの舞台出演となる山田勇気さんの五人での舞台という布陣。

いずれもトップクラスの舞踊家揃いというペンタゴンに痺れながらも、
その一角を担う重責はひしひしと感じつつ稽古に臨んだわけですが、
実際新潟に来て、笑いの絶えない稽古場の雰囲気からは、
舞踊と演劇の融合という大きな挑戦の連続でありながら、
時として家族の団欒的な安らぎ感すら感じられるリラックスした空気であり、

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とはいえ高度な身体性を求められる作品だったので、すぐにクタクタになるから
比較的短い稽古時間内に、それぞれが成熟したプロの仕事を見せる驚嘆の現場だった。

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※何の気なしに「飛んでみてください」とリクエストして撮影たのですが、身体を鍛えあげた者のみが出来る”空中浮遊”が背景の黄昏と見事に調和する美しい写真に………。 photo by おくぬ〜

そして今回、舞台にかかわった人たちが異口同音にいうことが、
舞台稽古が始まって本番というピークへの持って行き方が、
まるで竜巻に巻き込まれるようにぐんぐん上昇した感じで、
私も渦の中に巻き込まれた宙に舞い上がった感じがする。

そのアゲアゲぶりは、出番のない時に袖から見てても歴然で

「ダンサーさん達は、もしかして私の知らないところで闇練してるのではなかろうか?」

と思ったほど。

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何より私にとって大きな収穫は、
2000年から所属したSPACで、鈴木忠志さんのもと、ひたすら追求してきた身体性が、
今回Noism0の公演の中でも大いに発揮されたことは、
穣さん達もNoismで、鈴木さんと同じ高い山の頂を、別のルートを通って目指してきた芸術家であるということがより強く実感でき、
そんな身体の同志達が舞台で出会うことによって、
これほどまでに美しく、深く、新しく、衝撃的で、人々の心に迫る作品に仕上げられるということが証明された場所に居れたこと。

そして何より今回、出演者がそれぞれ味わった至福の喜びは、
これまで困難な道のりを歩み続け、闘い続けてきた
者たちにのみに与えられるご褒美のようなステージであもる………という気さえした。

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なので、もちろん、
今回の作品の再演ということでNoism0が再集結ということになるかもしれないし、
また新作ともなると心が躍るわけだが、
今後のNoism0の活動は、演劇や舞踊といったジャンルを超えて、
日本の、いや世界の舞台芸術を、新たな次元に引き上げる起点となる可能性すら感じる試みであったのではなかろうか………
と、憚りながら思った。

そして、早くも来年の1月にはNoism1&2 劇的舞踊『カルメン』が再演されます!

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劇的舞踊『カルメン』PV
『カルメン』再演情報"
おくぬ〜日記Noism『カルメン』新潟公演終了!いざ神奈川へ!

そして

奥野も、少しづつこちらでの活動も始め、まずは9月25日Engeのギャラリーで
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』をフルートと尺八による舞語りコンサートに挑戦します!
Reading with performance and music*

⚪︎asienspiegel
http://asienspiegel.ch/2015/09/lesung-mit-performance-und-musik/

イザベルさんとは、たまたま彼女が来日中の7月に、
豊橋のお寺で共演ずみ!

どんな舞台になるか楽しみです!



Tschüss!


奥野晃士

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