『存在感のある身体』について
グリューエッツィー
SPACに所属してから17年以上になるが、
映像が多用されていたり、ロボットが出てきたりと、
『演劇』の世界も実に多様で、
社会が文明化の方向に向かうに追従しており、
劇場の機構などもどんどんハイテクになっていくのだが………
そんな傾向に俳優の身体はどういう影響を受けているのだろか?
いや、そもそも劇場に立つ俳優が求められているものって何だったのだろうか?
『オイディプス王』など、
2500年前のギリシャ悲劇の中でも最も有名な作品を残したソフォクレス。
彼はもともとは俳優志望だったそうだが、
喉が弱かったために劇作家に転向して、逆に名を残した………らしい。
きっと「敵を知り己を知った」からこそ、舞台に立つことを断念できたのだろう。
もしソフォクレスが現在に生きていて、
演劇をやっていたとしたらどうか………?
声が届かないならマイクがあり、
客席数300人以下の劇場でしかやらない静かな演劇もある。
はたまたテレビというまばゆい世界も存在しーので、
案外大作を世に出すことなく、
売れない俳優を細々とやり続けていたかもしれない。
価値観の多様化にながされてしまうと、
身体というものは元来怠けるものだから、
文明の波に押し流されたはての身体はきっと
残念な結果につながるような気がする。
江戸時代の平和な世の中、
大石内蔵助なんかは、平時には「昼行灯」と揶揄される家老でありながら、
有事に類まれなる能力を発揮した。
“ストレスがあるから行動するエネルギーが生まれる”という人間の仕組みがよく話題にのぼっているが、
私が鈴木忠志氏との活動を通じて学んだのが、まさにこの点であり、
氏の開発した『スズキ・トレーニング・メソッド』は『動物性エネルギー』という言葉が象徴しているように、
原始の人間の能力を呼び覚ますことにあるのではないかと思えるような現場であった。
つまり、トレーニングは、
氏の舞台に出演する俳優たちの最低限の身体の教養であり、
氏の演劇理論の体現であり、
舞台に立った時、神に対峙するその前に行うべき禊であった。
だから少なくとも氏のトレーニングはジムやエアロビの類にあらず、
より精神的でより実戦的なものであった。
ゆえにアメリカの演劇界に与えた影響は凄まじく大きかったのだろう。
大阪でこの夏『存在感のある身体』
というワークショップを開催させていただくにあたり、
我こそはスズキトレーニングの何たるかをお伝えできるなどとは思っていない。
あくまで私の理解の範囲で、身体の『存在感』について、
様々な角度から考察しながら、理論と実践をお届けできたらと思う。
スイスにきてから2度にわたって
イタリア語圏の大学で5日間にわたって学生たちを指導させていただいた経験も大きい。
一つは劇団未来のワークスタジオにおいて8月12日に、
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もう一つは8月15日、
なんと実家の淡路島で開催させていただけることになった!
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また、
奥野が発案し、県内外で一般の方々が演劇に気軽に触れることができる企画として展開している
リーディング・カフェという企画があるが、
お茶を飲みながら、演劇の台本を読む「読み合わせ」形式のイベントも
開催させていただけることになった。
8月6日は未来ワークスタジオでのプレ企画として
『声に出して読むモリエール』開催させていただきます。
※『声に出して読むモリエール』についてはこちら
淡路島での『存在感のある身体』ワークショップでは、
午前中の2時間をリーディング・カフェ・タイムとして『天守物語』を読む。
※Rカフェ・タイムについてはこちら
8月10日は高槻市のアート・デ・アートビューという素敵なギャラリーにおいて………
『お茶を飲みながら戯曲を楽しむ会』
※『お茶を飲みながら戯曲を楽しむ会』についてはこちら
ぜひ多くの方々に演劇の楽しさを味わっていただけたらと思う。
ではまた!
奥野晃士