FC2ブログ

おくぬ〜の『来た球を打つ!』

スイスと日本で活動する舞台俳優奥野晃士(あきひと)のブログ。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

追悼 『わが町』音楽監督 松本泰幸さんを偲んで

Grüezi!

2010年秋に初演された今井朋彦 さん演出、
ワイルダーの『わが町』の音楽監督だった
松本泰幸さんの訃報が届いた。

以来、一人スイスの地にて、
舞台で関わらせていただいた故人との思い出を反芻している。

2010年この『わが町』という作品は私の人生の中でも、
転機といえる時期に取り組んだ作品であるし、

音楽監督だった松本さんは挿入歌の作曲だけでなく、
劇中の生演奏という形でも舞台上に登場していたので、
共演者でもあった。
1455104_541595475932601_974886685_n のコピー
◾︎写真/2013年秋、『わが町』再演された時。

『わが町』といえば、アメリカ戯曲を代表する作品で、

「地球上で『わが町』が上演されていない夜はない」

と言われるくらい
世界中で愛されている作品であり、
私が初めてギブス医師という、父親役を仰せつかった作品。

「俺も父親を演じる年になったか………」

と、しみじみ思った。

しかも私生活でも父親になる時期でもあり、
作品を通してワイルダーから
父親になるべき心構えを伝授されているようにも思えた作品だった。

例えば、一幕にこんなシーンがある。

ギブスが夫人から、高校生になった息子のジョージが母親の薪割りの手伝いを少しもやってくれないという愚痴を聞き、
手伝いを促すシーン、
食卓で息子と二人で向き合い、まず

ギブスが「表で変な音を聞いたんだけど、何だかわかるかい?」

と問いかける。
そしてその音が、母親が薪を割る音であることを告げる。
そしてギブスは以下のようにこんこんと語る。

ギブス「お前も知ってるとおり、母さんは・・・朝は早く起きる。一日中御飯を拵らえて、洗濯にアイロン掛けだ・・・その上に裏へ行って薪を割らなくちゃならん。母さん、きっとお前に頼むのが面倒になったんだな。諦めて自分でした方が早いと思ったんだろう。だがお前は、母さんの拵らえた御飯を喰べる。母さんが綺麗にしておいてくれた服を着る。そうして表へ出て行ってベースボールをやっている・・・母さんはまるで家政婦みたいだがそう云うことは私達、したくないな。いや、お前が気がつきさえすればそれでいいんだ。さあ、ハンカチ。」

自責の念にかられ、目に涙を浮かべるジョージに、ギブス医師はこう続ける。

 「ジョージ、父さんは、お前の小遣いを週二十五セントに増やしてやることにしたよ。もちろん薪を割って上げるためじゃない、そりゃお前の親孝行だからな。しかし、お前もだんだん大きくなるし・・・小遣いの使い道も増えて来るだろうからね。」

言うことをただ言うだけでなく、愛情あるフォローを入れる………。
私もギブスのように優しく息子を導く父親であれたらいいなと思ったものだ。

翌年生まれた子供が、もしも男の子だったら、
ジョージと名付けていたかもしれない………。

劇中には賛美歌を歌うシーンがいくつかあって、
松本さんは歌の指導も買って出てくださっていて
そこでは音楽を通じて、心を通じ合わせることの重要性を学んだのだが、
毎回魂のこもったご指導だった。

そして、松本さんこそ、このギブスのように優しく大らかに、
いつも我々を高みへと導いてくれた人であったと思う。

そして氏の奏でるサックスの音色は深く澄み渡り、
メロディーは切なさの中にやさしさと希望が満ちたものだった。

動読公演でのコラボが実現しなかったのが悔やまれる。

賛美歌「つかれたるものよ、みこえきけ」と「かみによりて」をくちづさみつつ………


どうか安らかにお眠りください。

IMG_5469 のコピー


Tschüss!


奥野晃士






スポンサーサイト

-2 Comments

エミリー says..."わが町"
今から23年前、とある劇団でわが町の舞台公演をし、私はエミリー役をやらせていただきました。人と接するのが苦手な人や些細な事で喧嘩をした人がいて、こんなんで本番は大丈夫かと気になったものでした。でも、リーダー格みたいな人が、「この際、誰かに意見ある人はハッキリ言おう」と発言した事で、まとまり始めた感じで、本番は成功しました。エミリーとジョージはダブルキャストなので相手を交換して台本の読み合わせをしている間に他の人達は「疲れたるものよ、み声きけ」と「神によりて」の歌を録音する為に歌の練習していたりと、していたものでした。当時の私は無宗教で賛美歌の事は基本すら知りませんでした。でも通し稽古をした時に讃美歌の曲を聴き、「あ、いいな」と感じた事をハッキリと覚えています。公演を見に来てくれた何人かの人から「可愛かったです」とか「ファンになりました」と言われて、照れた事も覚えています。退団した今でも、たまに讃美歌を口にしています。仏教なのでキリスト教とは何の縁もないですが、2つの賛美歌はこれからも口にしていくと思います。
2017.01.15 15:38 | URL | #EBUSheBA [edit]
kitatamaoutsu says..."Re: わが町"
メールありがとうございました。地球上でわが町が上演されていない夜はないと言われるくらい愛されているこの作品の魅力は、掘り下げていけばいくほど、より仏教的、神道的な解釈になっていくような気がします。そういう意味で、我々日本人にとっても、とても身近に感じられる作品かなと。わが町という作品について素敵な思い出をお持ちですね。エミリーという役を通してお若い頃にわが町にかかわれた経験はとても貴重だと思います。難しい役だけにいろいろお悩みになったと思いますが、死と向き合う経験はそうできないのではないでしょうか。その頃の思い出は宝物ですね。

> 今から23年前、とある劇団でわが町の舞台公演をし、私はエミリー役をやらせていただきました。人と接するのが苦手な人や些細な事で喧嘩をした人がいて、こんなんで本番は大丈夫かと気になったものでした。でも、リーダー格みたいな人が、「この際、誰かに意見ある人はハッキリ言おう」と発言した事で、まとまり始めた感じで、本番は成功しました。エミリーとジョージはダブルキャストなので相手を交換して台本の読み合わせをしている間に他の人達は「疲れたるものよ、み声きけ」と「神によりて」の歌を録音する為に歌の練習していたりと、していたものでした。当時の私は無宗教で賛美歌の事は基本すら知りませんでした。でも通し稽古をした時に讃美歌の曲を聴き、「あ、いいな」と感じた事をハッキリと覚えています。公演を見に来てくれた何人かの人から「可愛かったです」とか「ファンになりました」と言われて、照れた事も覚えています。退団した今でも、たまに讃美歌を口にしています。仏教なのでキリスト教とは何の縁もないですが、2つの賛美歌はこれからも口にしていくと思います。
2017.01.16 02:33 | URL | #- [edit]

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する

該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。